恋人契約

契約22

その後、タクミに連絡をとろうとしたが、全然とれずにいた。
仕事も忙しさをまし、疲れもピークに達し、連絡をとることすら出来ずにいた。
水橋さんもタクミに連絡をとろうとしてくれたみたいだが、やはり無理なようだった。
バタバタしてる中、ケンの住む場所も決まりまた部屋がガランと広くなった。
あの日、玄関で泣き崩れた私をケンは必死で慰めてくれた。
けどケンの声は届かなかった。
結局、仕事を忙しくこなす事で立ち直ろうとしていた。
その姿を見たケンは、会社の屋上に呼び出して言った。
「俺諦めます。やっぱ俺じゃ力不足みたいだし、あんなに泣いてたのに、こんなに仕事をしてる先輩見て、俺も仕事頑張ろうって思ったんです」
「そっか…ここはやる気があれば、いくらでもいい仕事出来るし、若くたって任せてもらえる。まぁその分1人の比重は大きいけどね」
「頑張ります!俺!先輩は素直になった方がいいですよ。仕事だけが人生じゃないですよ!じゃ、俺頼まれてる事あるんで」
そう言ってケンは降りて行った。
仕事だけが人生じゃない…か。
でも女としての幸せはもう無理だよ。
親に初めて気に入られた彼。
他の男にキスされても、好きだからって許してくれた。
でもさすがに関係持ったと思ったらね…
最後までしてないとはいえ、ほとんど変わらないようなもんだしな…
しょうがないよね。
久しぶりに早く帰れたユイは、携帯に留守電が入ってる事に気付いた。
タクミからだった。
『ユイ…今日16時の便でNYへ旅立ちます。
ユイと過ごした半年間、凄く楽しかったよ。
年上だけど、凄く可愛い所がたくさんあって僕にはもったいないくらいの人でした。
最初は契約だなんて恋人もどきだったけど、チャットをしてた時からずっと興味があって、一目見た時から恋に落ちてたと思う。
頼りない男だったと思うけど、一緒に時間を共有出来て良かったと思う。
向こうからユイの幸せを祈ってます』
ユイは時計を見た。
19時を回っていた。

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