恋人契約

契約21

「ユイ…?洋ちゃん…」
「タクミ!!」
足が震えて、血の気がひいてくのがわかった。
「洋ちゃんコレ忘れてるよ」
そう言って水橋にマフラーを渡して、タクミはすぐさまエレベーターに乗り上がった。
「タクミ!」
ユイはその場を動けずにいた。
「田辺さん。僕と君とは最後まで関係を持ってないよ」
えっ…
「でも私…」
「昨日たしかに、君に一目惚れをして、酔ってる君を部屋につれて行った。キスをすると君は答えてくれた。そのままベットに」
「でも洋服私着て…」
「うん。脱がせて、答えてくれたよ。だけど、僕に抱きつくと君は僕の事をタクミって呼んでひどく泣いてね。泣いてる君にたいして、あれ以上無理にする事は出来なかったよ」
「私…」
「タクミにたいして、何か言えない本音でもあるんじゃないのか?泣きながらずっと好きだって言ってたよ。タクミ…もうすぐNYに行くんだろ?仕事よりついて行きたいんじゃないのか?」
まるで鈍器で殴られたように、頭が痛くぐるぐる回った。
その後、水橋さんは何かを言っていたが聞こえなかった。
気がつくとエレベーターに乗っていた。
そうだ、まずタクミに謝ろう。
許してもらえるかわからないけど。
最後までしなかったにしろ、タクミを想像して水橋さんとしようとしてたなんて、妄想にもほどがあるよ私。
しかも覚えてないし。
無意識の中の自分が出たんだな、きっと。
ついて…行きたいのかな…
でも仕事が…
エレベーターをおり、部屋の扉をあけた。
「ユイ!」
ケンが慌てている。
「ケン、どうしたの?」
「タクミと会わなかった?荷物まとめて急に出ていったんだ!」
嘘…
そう言えば隣のエレベーターが下がって行ってた気が…
「すれ違いになったんだね、ユイ…なんかあったの?」
玄関で崩れ落ちてしまった。

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