a childhood friend

嗚咽

5月5日。

ホワイトデーから1ヶ月半が過ぎた。
あの後和くんに会う事がなかった。
1週間くらいは、会ったらどういう顔すればいいだろうかと悩んで、家を出る時や帰る時は気が気じゃなかった。
だけど、4月になり受験生と言う事もあり、だんだん忘れていた。
GWと言っても、我が家はこの日、結婚記念日と言う事もあり家には誰もいない。
いつも二人でラブラブ旅行へ行ってるのである。
小学生の頃は和くん家によく預けられていた。
昼間加奈子と図書館で勉強し、加奈子の家で夕食をご馳走になった。
泊まるようすすめられたが、なんとなく1人になりたくて断った。

夜空を見上げながらブラブラ歩いていると、家の角の所で一台の車が止まっている。
見たことない車だなぁ
そう遠目で思いながら見ていると、1人の男性が助手席からおりた。
「あっ……和くん」
助手席から、運転席側に回り何か話してたあと、キスをしていた。
手をふって、車は発車した。
見送り、振り返った。

由香は動けず呆然と立っていた。
「和くん…」
小さい声で呟いた。
彼女…
よく見えなかったけど、車って事は年上。
彼女…
彼女……いるのにあたしに…
思い出した。
あたし、キスされたんだ。
なのにこの人はこうやってキスするんだ。
和彦も気付き立ち尽くしていた。
気まずそうに歩きだし、由香の前にたった。

「今帰りか?」
気まずそうに話しかけてきた。
無視をして家に向かった。
追いかけてくる事もなく、家の中に入った。
ドアを閉めた瞬間涙が出た。
自分でもよく分からないが、悲しくなっていた。
キスをしている和くんが頭から離れない。
自分がされた時は疑問だらけで、どうしようって事ばかり考えていたが、涙が止まらない。

キス…してた。
あたしの知らない大人な女性と。
見送ってる優しい顔…
あたしの頭を撫でる和くん。
あの笑顔…優しい笑顔…
「しょうがないな」って、いつも、いつもあたしの隣にいた…
あの、あの笑顔は、あたしにしか向けられてなかったのに。
頭の中で今まで優しくされた映像ばかりが思い浮かび、涙が止まらなかった。
でもなんで泣いてるのかまだよくわからなかった。
ただあの笑顔と、キスしてる姿が離れなくて、涙を止める事は出来なかった。
玄関で倒れ込むように声をあげて泣いていると、玄関があいた。
和彦が立っていた。
慌てて家の電気をつけ、涙をふいて言った。
「なんか用?早く帰りなよ」
「泣いてる声が聞こえて帰れるわけないだろ」
和彦に背をむけて、精一杯明るく言った。
「泣いてないよ。気のせいだよ。だいたい泣いてても和くんには関係ないじゃ…」
話す途中で、和彦が後ろから由香を抱き締めた。
あっ……
胸が締め付けられるような思いがし、前に回した手を握りたくてしょうがなかった。
でも、無理して力強く冷めた口調で言った。
「何してるの、和くん」
「俺にもわからない。でもそんな風にされるとほっとけない」
腕を振りほどき、叫ぶように言った。
「彼女がいるくせにやめてよ!何がほっとけないよ!
あたし達幼なじみでしょ!幼なじみはこんな事しないよ!
やめてよもう!もう…わかんないよ…和くんがわかんないよ…」
嗚咽ってこういう事なのかもしれない。泣きながら倒れこんだ。
あとにも先にもこんなに泣いたのがこれ一度きりである。
和彦はただそこに立っていた。
泣いてる姿を見てうつむき、静かに玄関を出た。
玄関の扉がしまる音に余計に苦しくなり、いつまでも泣いていた。

誰か教えて下さい。
あたしはどうしたらいいですか?
わからないんです

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