a childhood friend

きっかけ『2』

3月14日。

本当はこの日彼女とデートだったが、土壇場で彼女の予定がダメになってしまい、朝珈琲を飲みながらテレビを見ていた。
……そういや、由香にチョコ貰ったんだ。
たまには遊んでやるか。
そうして、遅めの朝食を食べ終え家を出ようとした。
「かず!どこいくの?」
靴を履こうとして、母親が声をかけた。
「由香ん家行ってくる。帰りは遅くならないよ」
そう言って出掛けた。
それから……


「だから謝ってるだろ」
「普通部屋入る時ノックするでしょうが!和くん常識無さすぎだから」
さっきノックせずに部屋に入り、おもいっきり下着姿の彼女を見てしまった。
「別にいいだろ。昔もらしたパンツも洗ってやったじゃねーか」
「むっ、昔は昔だよ!」
そうやって、なんでもない感じで話していたけど、実はめちゃくちゃ脳裏に焼き付いてる。
それこそ幼少時代は風呂にも二人で入ったし、
同じ部屋で着替えもした。
でも現在見てしまった彼女の姿に……

本当に昔と違うんだと、妙な気持ちになった。
隣で怒りながら喋ってる妹的存在にたいして……
ヤバい、俺何考えてんだよ。
彼女がいる身なのに良からぬ事を考えていた。

二人は動物園にいた。
「猿見て何が面白い」
ベンチに座りながら和彦は言った。
「和くん、感動薄すぎ。可愛いじゃん」
目を輝かせて見ている。
こういう部分は昔から変わらないんだよな、こいつ。
嬉しそうに動物を見てる姿に、まるで父親かのように微笑ましく見てた。
「そういや和くん!なんで今日うちにきたの?」
「あぁ…」
言っていいのか?
「和くん?」
妹に戸惑う必要もないし、隠す事もないか…
「彼女が予定狂って。それにお前からチョコ貰ったから、久々遊んでやろうとおも…」
横に歩いていたはずの由香がいない。
振り向くと、後ろで由香がいる。
戻って由香の前に立った。
「由香、どうしたんだ?さっき食い過ぎたから腹でも壊したか?……由香?」
「彼女…いるんだ」
ドキッとした。
自分から彼女がいるって言ったくせに、由香に言われ、妙に緊張した。
「あぁいるよ」
少し浮わついた声で言った。
あきらかにさっきまでバカ話したりして笑っていた由香が、泣きそうな顔になった。
「由香…?」
こういうの、言っちゃヤバかったのか。
ずっと兄妹のように育ったわけだし、兄とか姉とか結婚すると嬉しいけど、なんか切なくなる。寂しくなる。そんな気持ちになってんだよ。
……なってんだよって、心の中で何に言い訳してんだ。
「由香?……かっ、彼女がいたって、たまにはこうして遊んでやっから、泣くなよ」
そう言って頭を撫でようとすると、手をふりはらわれた。
「泣いてないし、子供扱いしないでよ」
由香は冷めた強い口調で言った。

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