a childhood friend


8月19日。

4日ぶりにこの街に帰ってきた。
夕方、由香と待ち合わせをしている。
田舎にいたのも含め、その前もバタバタしており、少し部屋で喋っただけで、ゆっくり会うのは久しぶりだ。
しかしこの4日間。
綾瀬に好きだと2度目の告白を受け、またキスまでされた。
俺…隙多すぎるよなぁ
彼女となった由香にさえ、あのキス以外まだしてない。
いや…別にそういうのが目的じゃないから、別にしなくてもいいんだけど…
帰ってくるまでの間逃げても見つかり、結局振り回され、うちの親族とも気が付いたら仲良くされ…
「可愛い彼女だね〜」
と、ばーちゃんまでも誤解される始末。
由香と付き合う事になった夜。
お互いの親には内緒にしようと話した。
何故なら由香の親父さんは激娘ラブ!で、俺は幼なじみだから普通に接してるが、付き合ってるなんてバレたら………
「和くん、死んでる」
「えっ!!!」

「驚き過ぎだよ!猫が死んでるの。ひかれたんだね…可哀想…」
あぁ、猫か…
焦った。
「和くん?」
「なんでもない!なんでもない!あはははっ」
なんて乾いた笑い…
「へんなの……和くん…」
「なんだ?」
由香は目線を前に向けたまま、赤くなりながら右手をさしだした。
手……
由香の方を見て笑いながら手を繋いだ。
「見ないでよ!」
「何照れてんだ!お前」
「だから見るなって言ってんでしょうが!前見て歩きなさい。前見て!」
やっぱこいつ可愛いなぁ。
好きになってから、いろんな仕草が、今まで気にしてなかったものが、いとおしく感じる。
やっぱり、一緒にいて良かった。
そう思った。
「〜〜で、ばーちゃん家どうだった?」
「ごめん、聞いてない」
「だから!田舎どうだったのよ」
田舎ですか…
まさかクラスメイトにあって、友達宣言されたけど、やっぱり好きです!
キスされました!あげくずっとやれ川だ!山だ!と引っ張り回され、一族には彼女連れてきたと勘違いされたなんて…言えるわけがない。
「楽しかったよ。もうこれからはちょくちょく行けないだろうし。大学行ったとしても県外だし、1人暮らしするつもりだから…下手したらもう行けないかもな…」
「1人暮らし…?」
由香の声は聞いておらず、口にしてみて、最後だったのかも…と思うともっとばーちゃんと話せば良かったかと思った。
まぁ行けないことないし、行けばいいんだよな…なんなら由香連れ…
由香を見るとうつ向きながら歩いている。
「由香?」
「来年にはここいないの?」
あっ…
そういや話してなかった。
「実は俺、行きたい大学があって。実習できたことある人なんだけど、面白い教授や授業があるらしくて、通えなくないけど3時間かかるんだ。だから1人暮らししようかと。親父達には話して、了解は得てる。だから…まぁ前の彼女が金かかるってのもあったけど、少しでも出そうかと貯金してたんだ。まぁ今は受験のでしばらくバイト休むけど……由香?」
「会えないの?」
「3時間かかるけどこれない距離じゃないから、休日には会えるよ。今だって、隣に住んでても会わない時は会わないじゃん。だから」
「全然違うよ!」
由香が走って行った。
「待てよ、由香」
「全然違うよ…」
「なんで?由香が会いたいんなら俺くるし、まだ半年も先の話だよ。それに受かるかまだわからんし」
表情の暗い由香を見て、どうしたらいいかわからなかった。

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