a childhood friend

逢い引き

7月1日。

「待ちなよ、橘さん!」
孝平が由香の肩を掴んでひき止めた。



その数時間前。
テストを終え教室を出ようとすると孝平が立っている。
校内放送で告白をしたので、クラス全員が見てる。
めちゃくちゃいや…
そう思いながら加奈子に背中を押され、孝平とともに学校を出た。
「橘さん、どこ行きたい?」
「別に」
冷ややかに言った。
どういう神経してんのよ。
あの放送のあとも、ちょくちょくクラスにくるし、校内新聞にまで『人気DJ3年の木谷孝平、放送中告白☆』なんて見出し出て、インタビュー受けるって、芸能人かよ!
あんな風に言われて、人気あるのに拒否ったら、あたしが何されるかわからないわよ!
デート受けても一部白い目で見られたけど。
だいたい木谷君の事知らないし。
だからデートしたいって言われたけど…
和くんが頭の隅にあり消えない。
好きだって思って、加奈子みたいに彼氏GET!って思うんじゃなくて、なかった事にしたいっておかしいのかな…
二人で歩きながら、孝平の質問や、話しに適当に相槌を打った。
とりあえず1日付き合ったら満足するだろうから、帰りに断ればいいよね…
「橘さん、彼氏いるの?」
半分聞いてなく返事をしてたので、急にドキッとした。
「いないけど…」
こういう話し出たんだから、もう言ってもいいかな…
「じゃあ僕と付き合おうよ。絶対楽しいと思うよ!高校も多分同じだろうし」
「みつはた行くの?」
「うん。だから付き合おうよ!」
やっぱり言おう。
「ごめん、木谷君とは付き合えない」
「なんで?」
なんで?…言われると困るな…
「すっ…好きな人がいるの」
ベタだけど、一応間違いじゃないし、王道だよね、あきらめてくれるよね。
「うちの学校?」
つっこんで聞くんだ。
「あ…ん…」
「もしかして嘘?僕の事知らないからって、適当に断ろうとか考えてない?そんなんじゃあきらめないよ」
バレてる。
「ちっ…違うよ!あの…幼なじみ…そう!幼なじみなの!
年上の!だから木谷君が知らない人!もういいでしょ、これで」
ぶっきらぼうに言い、帰ろうとした。
「まだなにもしてないよ。今日1日デートしてから決めてよ。好きな人いるって言っても付き合ってないんでしょ?
じゃあ僕にもまだチャンスあるよね!」
孝平はにっこり笑って言った。
あきらめてとにかく1日付き合う事にした。
マクドナルドでご飯を食べ、ゲーセンで遊んでカラオケに行った。
やはり喋りなれてるせいか、話しやすい。
少し楽しくなってきた。
「僕ん家、駅の向こうなんだ。今日はありがとう。やっぱ橘さん歌うまいね!絢香とか鳥肌たったよ!」
ここで和んで話してる場合じゃない。
「木谷君。あたしやっぱり付き合えない」
「幼なじみだっけ?……でも昔から知ってるのに付き合ってないってのは…」
覗き込むように聞いてきた。
顔を外し黙った。
この人は話したからって言う感じじゃないし、あたしの事も彼も知るわけではない。
全部話してわかって貰おう。
今は誰かと付き合うとかやっぱ無理だし、だからって和くんの事…
「橘さん…」
「わかった。あたしの今の気持ち話す」
和くんとの昔から付き合いや、詳しく言わないけど今の状態や気持ち全て話した。
話してる途中に和くんと鉢合わせた。


走り去ったあと、肩を捕まれ孝平に止められた。
「1人になりたいの。それにさっきも言ったようにあたし、誰とも付き合わないから」
「でも僕まだあきらめないよ」
その言葉を無視し、家路に着いた。

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