a childhood friend

想い

5月6日。

時計を見ると早朝5時。
眠れない…
起き上がる由香。
無言のまま部屋を出る。
ちょっと散歩しよ…
部屋着のジャージのまま家の外に出た。
朝はまだ寒いな…
昨日泣きすぎたせいで激しい頭痛がし、それにともない吐き気もした。
薬を飲み寝ていたが、あんまりよく眠れてない。
お腹すいた…
でも食べる気しないや…
思考回路がかろうじて繋がってる感じで、ゆらゆらと歩いていた。

あっ…
広場…
広場と言っても空き地のような場所である。
昔ここでよくキャッチボールしたり、下に○かいてケンケンパしたり…よく遊んだなぁ。

学校や駅が反対だからこっちこないけど、まだ広場のままなんだ。
ずっと住宅が建てられず、木材が置かれたままになっている。
木材に腰かけた。
こんなに木…小さかったっけ…?
あたしが大きくなったのか…
なんか寂しくなり、体育座りで小さくなった。

和くん……

和…くん…

なんでだろう。
また泣きそうになってきた。
昨日あんなに泣いたのに。
こんなに泣いたの初めてなのに…
あのバカがあんなことしなきゃ、こんな気持ちなんなかったよ!
バカ!バカ!バカ!バカ!
あんな奴、いなくなればいいんだ……
………それは…やだな。
なに考えてんだあたし…
体育座りのまま、頭を下げて目をギュッとつむってると、いつのまにか睡魔に襲われていた。

遠くで声がする…
懐かしい声…
これは…
「由香!」
ハッと気付いて顔をあげると、和彦が目の前にいた。
「こんな所で何してんだ」
こんなとこ…?
半分寝ぼけていた。
あの体勢のまま少し眠っていたようだ。
「凄い冷えてるじゃないか、うちに帰ろう!風邪ひくだろ?」
ボーッとしてた思考回路が繋がった。
由香は急に立ち上がった。
「大丈夫、平気だよ。それより和くんこそ何してんのよ」
「俺はお前探してたんだよ」
その言葉に胸がチクッとした。
嬉しい…
そう思う反面、昨日の姿が蘇った。
「あたしじゃなくて、彼女ん所行きなよ」
本当は嬉しい…
その気持ちを消しゴムで力いっぱい消そうとした。
「彼女いるんでしょ!幼なじみなんか相手にしないでさっ」

また後ろから抱き締められた。
言葉が途中で切れた。
「だからこういう事さ…」
言いながら腕を外そうとした。
「離さない」
抱きついたまま和彦が言った。
「離して」
腕を外そうとする。
「離さない」
「だから離して…」
「離したらまたどこ行くかわからないだろうが!」
和彦のが泣きそうな声で言った。
「いなくなったら、俺が嫌なんだよ」
和彦が腕を外し、由香を振り向かせた。
「俺、気付いたんだ。由香の前にいる俺が本当の自分だって。一緒にバカやったり、遊んだりして笑ってる自分が本当の俺なんだって。
だから由香の隣にいたいんだ。
由香と一緒にいたいんだよ!」

胸が締め付けられ、息の仕方もわからなくなるくらい苦しくなった。
「自分勝手だよ。一緒にいたいって…あたしの気持ちはどうなるの?あたし…あたし…和くんが……」
言ってて気付いた。
これが『好きになる』って事なんだ。
唇をギュッと噛みしめ見上げた。
「彼女がいるくせに、勝手な事ばっか言わないで…よ!」
和彦を突飛ばし帰ろうとした。
「彼女とは別れる」
その言葉に足が止まった。
そのまま答えた。
「別れる…?」
「あぁ、別れる。そしたら俺の側にいてくれるか?」

今までに聞いた事がないような、力強い男らしい声に、この人は男性なんだと改めて感じた。
どう答えたらいいのかわからず、
「そんなのわかんないよ」
そう言い残し家に向かった。

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