a childhood friend

気持ち

5月6日。

俺は、夜中まで眠れなかったが、気が付くと寝ており、夢を見た。
由香が泣いている。
泣いてフラフラと歩いている。
どうしたんだ!
言いたいのに声が出ない。
近づこうとしたら動けない。

由香!
「自分が傷つけたくせに」
見ると5才の由香が足元にいる。
自分が…?
泣いている由香に叫ぼうとするが、声はやっぱり出ない。
俺何かしたんなら謝るよ!
はっきり言ってくれ!
なんで泣いてんだ!
いつもみたく怒るんじゃないのか!
なんで泣いてんだよ!
「お兄ちゃん、わかってないの?」
足元にもう1人の小さい由香がいる。
「お兄ちゃんが悪いんだよ」
「あんなことするから」
「お兄ちゃんが」
「お兄ちゃんが」
「お兄ちゃんが」
「お兄ちゃんが」
やめてくれ〜!
すると泣いている由香が振り向く。
「和くんなんて嫌いだよ」
泣きながら笑って言った。

ハッて気付くと、汗びっしょりかきながら眠っていた。

ゆ……夢…
時計を見た。
まだ6時かよ…
寝る前、3時過ぎなのを覚えてる。
とりあえず着替えよう。
和彦はクローゼットの前に立った。
あけようとすると腕が写真立てにあたり落ちた。
幼少時代の和彦と由香の写真だ。

「お兄ちゃん!これよくとれてるでしょ!写真立て貰ったから、ついでに飾るね!
勝手にしまったら由香、怒るからね!」
「わかったよ。そのへん飾れよ」

昔、ここに置かれてた。
写真…
二人とも楽しそうに笑ってる。
同じソフトクリーム一緒に食べようとして。
鏡を見た。
なんて表情ないんだ…
「自分が傷つけたくせに」
夢の中の由香の言葉が回る。
ベットに座る。
時計の針が進む音だけが部屋に響く。
俺…気付いてるのに、気付いてないふりしてた。
ゆりといる時より、由香といる自分の方が自然で行動してた。
たしかに、ゆりは年上で綺麗だし、可愛いとも思うけど、無理してた。
ずっと憧れてたような感覚だった。
話を合わせようと、特に興味がない話題まで無理やり話したりして。
気付いてた。
あのホワイトデーから、本当は思ってたのに、見ないようにしてた。
動物園を二人で歩いて、話して…
本当の自分、わかってた。
なのに…
「自分が傷つけたくせに」
俺バカだ。
あんな風に泣かせた。
いてもたってもいられなくて、抱き締めたくせに。
あんな顔、見たくなかったのに。
「自分が傷つけたくせに」
ごめん…由香…
和彦は、適当に洋服を手にとり着替え部屋をあとにした。
まだ7時前…
昨日はこどもの日だから、おじさん達はいつも通りだといないはずだ。
由香の家の前にいた。
ドアノブに手をかけると開いた。
「あいつ…」
昨日のままなのか?

一階は昨日由香がつけたままになってた。
二階の由香の部屋の前にきた。
電気は消えてたから多分寝てるはず。
そっと扉をひらく…
あけると誰もいなかった。
「由香…?」
あわてて他を探したがいない。
玄関へ行くと、由香の靴がなかった。
あいつ、どこ行ったんだ!
和彦は外へ出て、あてもなくただ走って行った。

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