イ・ケ・メ・ン

キュン死しちゃいます!

透き通った水が流れる川だった。
街灯はあまりなく、月明かりのみに近かった。
しかし晴れていたため、月明かりでも充分明るかった。
手を繋いだまま訪れ、二人とも子供のように水辺に立った。
「綺麗だね…」
本当にそう思った。
静かでここだけ切り取られてるみたいで、ただ水の音だけが流れた。
「あぁ、ごめん!思わず」
手を繋いでいる事に気付いて、準一は手を離した。
あっ…放さなくても良かったのに。
「じゃあ加奈子、ここに座ってくれる?
って言うか…良かったのかな?」
優しくて微笑んで頷いた。

石に腰をかけ、星空をぼんやり眺めた。

準一も無言で座りかきはじめた。

あまりにも星空が綺麗で、今までいろんな事を考えてきたのに、なんだかどうでもよくなってきた。

ちらっと準一の方を見ると真剣にスケッチブックと、加奈子を見つめていた。
その真剣な眼差しにドキッとするも、意識してると思われたくなくて、なんでもないふりをして、月を眺めた。
すると、流れ星が流れた。
「流れ星!」
思わず声に出していい、手を合わせ目を瞑り願い事をした。
イケメンの彼氏ができますように。
イケメンの彼氏ができますように。
イケメンの彼氏ができますように。
ふと我にかえると、準一が優しく微笑んでいた。
あっ……
ヤバい。
ど真ん中…
「何、願い事したの?」
「えっ…あぁ」
さすがに言えない。
「岩下先生の事…とか?」
忘れてた。
まだ誤解…ではないけど、もう大丈夫だって言わなきゃ。
「前にも言ったけど、先生の事は平気だから。
それより…それよりもね…」

『じゅんの事のが好きだよ』

この一言が言えない。
「どうしたの?」
言ったら、絶対彼氏GETできるのに、言えない。
学さんにはなんでも聞けたのに、言葉が出ない。
「………続き!描かなきゃね!」
「あぁ、うん」
あちゃ――
言えやしない。
まっ、でも大丈夫よね、うん大丈夫さ!
それからまた二人無言になった。
そういや…
「じゅん?」
「何?」
「じゅんは願い事してないの?」
準一の手が止まった。
「しないか」
なんとなく聞いてみたが、男の子がそんなのしないか。
準一はスケッチブックに描きながら答えた。
「したよ」
「なんて言ったの?」
するとスケッチブックをとじ立ち上がり、加奈子の前に立った。
「『加奈子が僕を好きになってくれますように』」
まっすぐ目を見ていった。
目線を外せず、言葉にする事が出来ず固まった。
にっこり微笑んだ準一は時計を見ながら言った。
「出来たし、ちょうど時間だから帰ろうか」
「はい…」
これ以上言葉が出なかった。

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