イ・ケ・メ・ン

いい奴なんです!

「じゅん…」
息を整えながら準一は、カバンを差し出して言った。
「なっ、泣くなら僕の腕の中で泣いてください!」
えっ!?
あまりにも突拍子のない発言に涙が止まって、さらには笑いが込み上げてきた。
「ブッ!あははははっ!あんた最高だよ!」
真っ赤になってた顔がさらに赤くなりながら、
カバンを加奈子に渡した。
「あー、おかしい。ありがと、カバン。
そういや私、筆だけ持ってきちゃったよ。
私のがおかしいよね」

そう言って、二人で笑った。
笑い終え、筆を洗い、その筆を先を見つめながら思った。
なんか泣いて笑ったら、どうでもよくなってきた。
目を赤くしたままにっこり笑い準一に言った。
「ありがとう」
あれ?
準一が真剣な顔で加奈子を見つめている。
ん?
ん?
私…ヤバい?
ドキドキしてたりすんのかなぁ〜なんて。
ふっ、ふざけてる場合じゃない。
ヤバい、めっ、目が離せない…

「無理してない?」


準一は目線を外さず言った。
真剣に自分の事、考えてくれてるんだ…

「うん。大丈夫。
ショックはショックだったけど……でもなんか大丈夫なんだよね!
恋愛感情じゃなかったのかな?あははははっ」
さらに強い目線で力強く準一は言った。
「そんなことないよ!僕見てて思ったんだ。
先生と話してる時の笑顔や、先生を見る視線。
あんな顔してて、恋愛感情がないなんてないよ!
加奈子はちゃんと……加奈子?」

準一の言葉に、大丈夫だったのにまた涙が出た。
学さんの事で悲しくて出てるんじゃない。
これは嬉し涙だ。
なんていい奴なんだ。
すんごいいい奴じゃん!
「じゅん!」
「はい…」
「メガネ猿なんて思ってごめんね!」
「えっ……」



加奈子さん、そこですか?

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