こいびと

捨てたはずの恋。

「ちょっとこい」

手を思いっきり引っ張り歩き出した。
学校から見えなくなった所で立ち止まり振り返った。

「ごめんなさい。でも電話してるのに出てくれないし、アドレスも変わっちゃったし。でもどうしても会いたくて」
いけないと思いながら、少しキレ気味に答えた。
「オレ言ったよな?好きな女いるって。いくらお前が思ってくれても、オレ答えられないから」
またこいつは泣いてしまうんだろう。
でもダメだ。
下手にかまうと、さらにこいつを傷つけてしまう。
沈黙があり、うつむいていた女が顔をあげた。
笑顔で言った…。
「だって好きなんだもん。しょうがないじゃん…付き合ってるの?その子とは」
笑顔の中に声は確実に震え、泣いているかのようだ。
「付き合って…」
『ないけど』と言おうとしたら、もの凄く大きな犬の叫び声がし、見ると彼女が立っていた。
あきらかに挙動不審な彼女を見て、また聞かれてしまったと思い、彼女の方へ行こうとした。
「彼女でしょ?」
そう言うと女は腕を引っ張り、くちびるにキスをした。

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