こいびと

あのね…。

彼女はビックリしたように言った。
「急にどうしたの?」
隣のジャングルジムに登りながら答えた。
「オレ、お前の事諦めようと思う。
あの子は今朝嘘ついたけど、彼女じゃないんだ。
それに彼女がいるのに、ともだちのお前に好きだなんて言って、気まずくさせねーだろ」
彼女はブランコからおり、ジャングルジムの下まできて言った。
「じゃあなんでキスしてたの?」
「あれは…向こうが勝手にしてきただけで…つーか、もういいだろ?」
彼女がおもいっきりキレて言った。
「何よ!好きだって言ったり、『ともだち』だって言ったり、あっ、あたし…」
泣き出してしまった。
あまりにでかい声で言われた事にも驚いたが、泣き出した彼女を見ていてもたってもいられなくなった。
ジャングルジムから飛び降り彼女を抱きしめた。
「泣くなよ、決心鈍るだろ」
「ばかぁ…」
そう言って彼女はオレの背中に腕を回した。
もしかしてこいつは…
でも…
でも…
でも……知らねーよもう。
彼女の腕を外しキスをした。
「あたし、ショックだった。
大会でも上の空で、ずっとずっとあんたの事が頭から離れなくて…」
言い終える前にもう一度キスをした。
「もう何も言わなくていいよ」
強く彼女を抱きしめた。
こいつも悩んでたんだ…。
やっぱり、オレには彼女しかいない。
泣き止んだ彼女が、笑顔で見上げて言った。
「あのね…あたし大好きだよ!実君の事、好きになっちゃった」
「バカだな、オレは初めから英子の事好きだったよ」
そうしてオレ達は『こいびと』になった。

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