こいびと

ともだち。

その日、彼女と一言も話す事なく家路についた。
部活も上の空で、タイムも伸びなかった。

なんだかどうでもいい気分になった。
あんなに好きだった彼女の笑顔が、こんななんとも言えない気持ちになるなんて、夢にも思わなかった。

姉貴の部屋からバカ見たく笑う声が聞こえ、部屋にいる事が嫌になり外に出た。

あてもなくなんとなく歩いていると公園に彼女がいた。
ブランコに座っているのを見つけたが、通り過ぎようかと思った。
だけど体は彼女の元へ。
ブランコの前に立った。
「何してんだお前?」
「ブランコ」
彼女は驚きながら答えた。
そのあまりにも普通過ぎる答えに二人して笑った。

笑い終えた後思いっきりブランコをこいだ。
彼女は晴れた星空をただただ眺めていた。
そして覚悟を決めたようにブランコから飛び降りて言った。

「オレたち…『ともだち』だよな」

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