ともだち

こんな気持ち。

「今帰り?」
振り返ると彼女がいた。
「駅まで一緒に帰ろ」
くだらない話をしながら、二人並んで歩いている。
この微妙な距離。
これが恋人同士なら手でも繋ぐんだろうけど、オレら『おともだち』。
いっそ握ったらこいつも気付くんじゃねーのか。
「…って、聞いてるの?」
「わりぃ、聞いてなかった。何?」
「雨降りそうだけど、傘持ってる?」
「見ての通りねーけど!なんとかなんじゃ…」

雨が降りだした。

二人で後少しだからと走り出した。
駅が見えてきたところで、彼女が急に立ち止まった。
「あっ…」
彼女の視線の先には、彼女が好きらしい先輩の姿が。
しかも隣には女。
1つの傘に二人。
しかも違う制服。
…彼女だな。
ずぶ濡れになりながら隣の彼女を見ると、なんとも言えない顔をしていた。
ふと、思い出した。あの日も雨だ。
オレもこんな顔をしていたのかもしれない。

そう思うと無意識に彼女の手を握った。
「こんなに濡れてるし、オレん家こいよ、タオル貸すから」
驚いた表情で顔を見上げたが、無言で頷き、二人で手を繋ぎ走った。

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