「恵!お風呂あいたよ〜・・って、寝てるし」 お風呂の中で、ぼんやり昔の事を思い出していた。 多分昨日、母親がきたせいだ。 「め〜ぐみちゃん。かぜぇ・・ひいちゃうよぉ」 ソファーで寝ている恵をジッと見た。 「女の子にはもてんのにねぇ。もったいないよねぇ。でも・・しょうがないのかなぁ」 「そうだねぇ・・・ふぁぁ!!寝ちゃったよ」 「起きてんじゃん」 「寝てたよ。さっきまで・・んっと!さてとぉ、お風呂はいろっかな」 そういって伸びをしながら、バスルームに入った。 あたしは、自分の部屋に入りベットの上に座った。 「この部屋・・・本当にあたしでよかったのかなぁ」 髪を乾かしながら、ぐるりと見渡した。 誰かが使っていたベット。 誰かが使っていたクローゼット。 あたしが来た時には、部屋は出来上がっていた。 「本当。隠し事は最後には言うくせに、ギリギリまで言ってくんないからなぁ」 あたしのが、いつのまにか簡単に話すようになってた。 「やっぱ、あたしは一番のつもりでも・・・・」 どうなんだろうな 一番なぁ・・・ 一番って、何が一番なんだろう? 「あ、アツアツッ!チカ!風呂熱すぎだよ!!!」 「つーか、隠せバカ!・・・もう・・フフ」 こうやって、ずっと笑ってたい。 むしろ話したくない話を、こんなに流暢にどんどん話す自分がいる。 「じゃあ、僕と一緒にいるのも・・本当は嫌なの?」 「違う!」 すぐに否定した。 「初めてなの。別に他の子と特に変わりなんてないはずなのに、なんかこう・・今まで誰かが近くにいるだけで嫌だったのに」 「まさかチカ・・・僕の事・・」 おもわず顔を見た。 「あ、や、違うの!違うっておもいっきり否定すんのも失礼だけど・・・プッ」 お互い噴出して笑った。 「ごめん、ごめん・・・あのね?実は」 ごくりと唾を飲み込んだ。 「うちの母親、浮気してんの」 「え?」 「親父は仕事人間で、出張も多いし・・妹のマイはひねくれてるし。ずっと前から家にいても一人な気分だったんだ」 聞きたくなんてない話だろうが、自分の100%と恵の100%でお互い向き合うには、自分からだと思ったから。 なんてのは大義名分で、ただ聞いて欲しかっただけ。 「母親も家計を助けるためってパートに出てて、妹は頭があたしよりいいからって、今は私立の中学に行ってんの」 思い出した瞬間、少し吐き気がした。 「チカ?」 「・・平気。中三の時に・・妹は受験のために塾の合宿で家にいなかった。親父ももちろん昼間はいない。あの時は、夏休みで・・そん時、友達の家に夜泊まりに行く予定があって。一応さ、予定みたいなの言わないとうるさかったからそう言ってて・・・でも前の夜にネットで遊んでて寝たのが明け方だったわけ。夏休みだし、別に昼まで寝てたってかまわないじゃん?あの母親・・あたしがもう友達の所に行ってるって思ってたんだろうね。そしたらさ・・・あいつ・・何してたと思う?家でだよ?あいつヤってたんだよ!あたしがいるとも知らないでさ!誰もいないからって、連れ込んでんだよ!」 いつのまにか熱くなり、泣きながら訴えるように話してた。 だんだん声が大きくなり、道行く人たちがチラチラ見ているのはわかっていた。 今までのあたしなら考えられない話だ。 すると、恵は無言であたしを抱き寄せた。 恵の心臓の音がとても心地よく、余計に胸がつまる思いがした。 「えへへへ・・ごめん」 「何言ってんだよチカ。もっと感情出していいんだよ?僕は、チカを裏切らないよ」 すごくうれしかった。 「って言っても、わかんないけどね」 「えぇ!ちょっ、めぐみぃ」 少し落ち着きを取り戻すと、涙を拭いて続けた。 「うん・・まあ・・元々違和感ある家にいたのに、そんなの見ちゃってさ・・余計になんか嫌になっちゃって。なんかそれから怖くなってさ、人に触れられたりすんのとか。何もないって思ってるんだけど、どっかで汚らわしいって言うか汚いって言うか。だからかな?コクられてもなんか気持ち悪かった・・でも」 なんでこの人は違ったんだろう? 「じゃあ、なんで僕はいいの?何か出来てる?」 ジッと見つめられ、あたしは笑みを浮かべた。 「うん・・・だからあたしも、恵の役にたちたい。正直、誰かにこんなこと思った事がないからどう言ったらいいか・・」 「いいんじゃない。人間同士の接し方に正解なんてないよ」 確かにそう思った。 同じ年齢の男の子が、なんだかすごく年上に見えた。 [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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