あたし+僕=何?


「またなんか考えてる」
「うん・・やっぱ女っぽいのかな?でも、恵って別に女になりたいわけじゃないもんね」
「急だなぁ。たしかにゲイだって言っても、ジョークにしかいつも捉えてもらえないからね」
たしかにそうなのだ。
だから、高校生の時にそうだと告白されても信じられなかった。


彼女がいる。
でも、学校でそんな感じに接してる子は見かけない。
「チカ」
「何、理沙?」
「最近恵君見てる率高くない?」
理沙の顔を見て、言わんとしてる事はわかった。
「何もないよ」

何って?

「怪しい!まぁいいわ。それより今日行く?」
「カラオケ?金ないからパス」

「適当」これがあたし。
だけど、あいつと知り合ってから何かが崩れてる。
「知りたい」って思ってる。

「恵。あのさ」
学校を出た所で声をかけた瞬間、違う制服の女の子が恵に声をかけた。
「陸!」
「え?」
おもわず、彼女を見た。
彼女も、あたしの声におもわず反応した。
この彼女を見て悟った。
他校の彼女だったからだ。
「え、あぁ・・恵の彼女?あたし、友達のチカ」
適当なありきたりな挨拶。
「宮前です」
可愛らしい、あたしと違うお嬢な感じの子だった。
恵は無言のまま彼女の手を引き消えた。
あたしは、ただそれを見ていた。
なんていっていいかわからない感情だった。
そんな感情の中家に帰ると、母親がいた。
一気に不快な気持ちに変わり、二階の自分の部屋へと上がろうとした。
「チカ。おかえりなさいくらい」
バタン!!
言い終える前に扉を閉めた。
あんな悪魔の声なんて聞きたくない。
ヘッドホンをつけ、周りの音が何も聞こえないくらいのボリュームで音楽をかけた。
単なるまやかしだとわかっていても。
ここは、あたしの居場所じゃない。
本当は別にあるんだ。
そう思いたかった。
ガンガンにかかる音楽の中、なぜか浮かんだのは恵の顔だった。

100%の自分。

恵は何を言おうとしたのか?
何が言いたかったんだろうか?
あたしは絶対に出せてない。

でも、でも、もしかしたら・・・?
恵には?
携帯を手にとった。
でも・・・
彼女が・・・
これって?
あたし・・・
まさか・・・
そんな・・・
でも、だって・・・

すると、メール音がなった。

「恵だ」
メールをみると、最寄り駅にいるのがわかりすぐに家を出た。
走って行くと、あたしを見つけあの優しい笑顔が手を振った。
「はは。走ってこなくても」
「か、彼女は?」
息をきらしながら、今までとはあきらかに違う自分にブレーキはもうかけれないでいた。
「もう、彼女じゃないよ」
「え?」
あまりにも普通に言い、鞄からペットボトルを取り出すと口に含んだ。
「別れちゃったの?」
「そうなるね」
「え?も、もしかして、あたしのせい?」
「座ろう」
そう言うと、ベンチの向かい歩きだした。
「いや、だからさ!」
とにかく追いかけた。
「チカ。僕はフラれたんだよ」
「え・・・?でも」
「なんなら確認してもかまわないよ」
なんでフラれたのに笑顔で話してるのかわからなかった。
それとも、皆こんなもんなんだろうか?
人を愛した事のない自分にとって、恋は他人の声でしかわからない。
「そんなもんなの?」
「それより僕に話しあんだろ?」
他人との距離。
それは、どのくらいが正解なんだろうか?
あたしは、やっぱりわからない。
「だから、チカの用件は?」
「用件?・・・・」
「何?忘れちゃったわけ?」
「え、あ、うん」

初めて一番近くにいる人なんじゃないかと思ってた。
だけど、彼女がいると聞いてその口ぶりや態度、今日どんな風にわかれたのかわからないが、あまりにもその変わらなさに今までの「恵」が偽者のように思えた。

「恵・・あたし・・誰かと付き合った事なんてないし、ましてや・・・たしかにね?一緒に遊んでる子はいるよ?でも、本当に遊んでるだけで・・なんて言ったらいいかわかんないけど、あたし本当は・・」

あたしは、怖かったけどなんとか自分の思いを伝えようとした。
それは、恵が言った100%を見せてるのかって事に確かに疑問を感じていたし、恵も見せてないんじゃないかと感じたからだ。
なんとか、この偽者の「恵」のきぐるみをはがしたかった。
今までのあたしなら、偽者でよかったはずなのに、こいつだけは、こいつだけは・・・・

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