あたし+僕=何?

14

「誰だと思う?」
「はぁ!?何言ってんのよ。知らないから気になってんじゃん」
すると、恵は吹き出して笑った。
「見たことないけど、チカは知ってるよ」
「知ってる?」

あの顔・・・知らない。
仕事の人?
確かに全員知らない。
でも、工場の人は皆恵が同性愛者だってのは知らないはず。
夜の人間なら別に隠す必要なんてないし・・・

「・・誰よ」

恵は窓の外を見た。
「覚えてる?高校ん時に話した話」

まさか・・・

「僕の」

初恋。
話だけしか知らない初恋の彼。

「・・でもさ、付き合ってないって言ってなかったっけ?」
「おいおい。チカはまた先走りするし。誰が付き合ってるとかって話したよ」
その後、あたしの知らない話がまた始まった。


同級生の彼の名前は北川敦。
「北川」「恵」と呼び合ってた。
北川のどんどん男になっていく過程や、恋にはしゃぐ可愛い感じ、笑った顔・・・なんとも言えなかった。
同性をこんな風に思うのは、普通じゃないと周りでは言われるため、何も思わない女の子達と付き合い、カモフラージュさせたが、この気持ちを消せるなら消したかった。
だから同じ高校へは進まなかった。
正直、これでよかったのかわからず、ただ頭の奥にはまだ北川がいた。
付き合う、付き合わないっての関係なく、誰が好みだの好きだのあるだろ?
いつしか、男ばかりになってた。
でも、だからといって高校に入ってクラスの男とどうこうってのはもちろんなく、これでいいんだろうかとまた女の子に告白されるたびに付き合ってった。
でも、気持ちは動かない。
たんなる暇つぶしでしかなかった。
男友達にも、自分がそうじゃないかってのに気づかれたくなかったし、自分がそうだとまだ信じれない自分もいた。

語りだした恵が、急にこっちを見た。
「な、何よ。続きは?」
「君と出会った」

たしかにそうだけど、初恋男とあたしは別に関係・・・・・あんの?

「三年になってチカを見てて、同種だって思ったんだ」
「はぁ!?あたし同性愛者じゃないわよ!」
「クスッ」
「あーー!!今笑った!」
「まあまあチカさん。落ち着きなさいって」
「もう!」
いつもこんな感じで子供扱いされる。
でも、それが心地よかったりもする。
そしていつも誤魔化されて煙にまかれる。
だけど・・・

「チカは、周りと距離をとってるって思ったよ。いつもどこかのグループにいるのにたまに消える。演技してる笑顔を見てたら同じ!同種って思った」

そう言われまっすぐ見つめられた。
この人は、女性に何も感じない人・・・なんだよな・・でも、でも・・・なんだろう・・

そして続きが語られた。

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